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交通機関とエコ その4 [├雑談]

ヒコーキの話

ボーイングは現在、787型機という新型旅客機の開発を進めています。

このヒコーキ、開発段階では”7E7”という開発機名が与えられていました。

”E”とは、Efficientのことで、高効率であることを強調したものです。

旅客機としては史上初めて、胴体、主翼の基本構造に複合材を使用し、大幅な軽量化を実現。

これにより同型機と比較して、燃費が2割程度軽減できるとしました。

このヒコーキに世界中から注文が殺到。

まだテスト飛行すら始まっていないというのに、現在オイラが調べた時点で817機もの注文を受けています。
2009/02/26追記:2008年末の時点で受注数は910機

ボーイング曰く、「民間航空機史上、最速で受注数を増やしている航空機プログラム」です。

ボーイング好きのオイラは大喜び。

しかしこの787のスペックで、1つ非常に残念だった項目があります。

それは巡航速度。

マッハ0.85なのですが、これは777や747と同等です。 

元来ボーイングはエアバスと比べて巡航速度を高く設定しており、これをセールスポイントとしてきました。

具体的には、

エアバスのワイドボディ機の巡航速度がおおよそマッハ0.82~0.83 なのに対し、

ボーイングの方は、マッハ0.84~85です。 

ごく僅かの差のように見えますが、飛行時間が10時間、15時間を超えるような長距離フライトだと、これが大きな差になるのです。

ボーイングのセールス担当は航空会社に対し、「御社の最長距離路線にエアバスを使った場合、これだけ時間がかかりますが、我が社のヒコーキならこんなに早く着きますよ!」などと言っているのではないでしょうか。

巡航速度とは、「最も燃費の良い速度」です。

厳密には、様々な条件でこの数字は変わるのですが、それでもこの数字がおおよその基準になります。

このシリーズで散々繰り返しましたが、速度が速くなると、それだけ燃費は悪化します。

「巡航速度が速く設定されてても、省エネしたければ速度下げたらいいじゃん」

と思うかもしれませんが、ヒコーキの場合そう簡単にいかないです。

速度を下げると、飛行姿勢が変わってしまうからです。

もうちょっと具体的に書きますと、

ヒコーキは主翼で揚力を発生させて飛んでいるわけですが、この揚力は、

・速度が上がると増える(下がると減る)

・迎え角が大きくなると増える(小さくなると減る)

という特徴があります。

離陸直後の低速時などは主翼に大きな迎え角を与え(機首を上げ)ることで揚力を増やし、速度の不足を補ってやります。

速度が上がるに従って迎え角は徐々に小さくできるのですが、

速度が巡航に達しても迎え角は0にはならず、通常3度以下の機首上げをしています。  

ここで先ほどの、 

「省エネしたければ速度下げたらいいじゃん」

に戻りますが、速度を下げると揚力が減ってしまうので、その分迎え角を増やす必要があります。

迎え角をわずかでも増やすと、空気の抵抗(抗力)がグンと増加します。 

水平飛行しているヒコーキがどんどん機首を上げていくと、この抗力が増えていくの、想像できますよね。

抗力は、ヒコーキが前に進むのを邪魔する後ろ向きの力です。 

後ろ向きの力が増えてしまったら、それを補うために前向きの力を増やす必要があります。

つまりエンジンの出力を上げなければなりません。

長々となってしまいましたが、そんなわけでヒコーキの場合、速度を下げたからといって、必ずしも燃費が良くなるわけではありません。

メーカーが設定した巡航速度を上回るのは勿論のこと、下回っても燃費は悪化します。

繰り返しになりますが、厳密には、「巡航速度」=「最も燃費の良い速度」というわけではなく、最も燃費の良い速度、消費燃料が最小となる速度は様々な条件で刻々変化するのですが、それでも巡航速度が大体の基準となります。

メーカーが新しくヒコーキを作る場合、まず巡航速度を設定し、その速度で飛んだ時に最も効率が良くなるように機体の設計を行います。

つまりボーイングの新型旅客機787は、マッハ0.85付近で飛び続けるよう宿命付けられたヒコーキ、ということができます。

速度と使用燃料量の関係は、2乗に比例して変化します。

簡単に言うと、「設定速度をちょっと低くするだけですんごい燃費がよくなる」ということです。

この787、燃費を2割節約することができたわけですが、仮に巡航速度をもっと低く設定していたなら、さらなる燃費向上が可能だったわけです。

”Efficient”であることを強調するのであれば、

仮に787の巡航速度を5%低く、マッハ0.81に設定していたなら、単純計算で従来機と比較して約3割燃費の良いヒコーキができたはずです。

しかしボーイングは、様々な方法で燃費を下げる工夫をしたものの、巡航速度を下げることには手を付けませんでした。

「巡航速度を下げる」というのは、技術的には最も簡単で手っ取り早く、確実な方法だと思うんですが。

「巡航速度は速いままで、燃費を2割も下げました。すごいでしょ!」

ということでしょうし、エアバスとの熾烈な競争、開発のいきさつを考えれば、そうなっちゃうのかなぁ、という気もしますが、

エコの観点で言えば、このご時世に、如何にもアメリカらしいなぁ、などと個人的には思ってしまいます。

そして・・・。

どうやらエアバスも同じ土俵に乗り始めているらしいです。

「最大巡航速度」という言葉を盛んにアピールするし、最新の380の巡航速度はマッハ0.85だし・・・。

電車に必要な電力は、油を燃やさなくてもいろいろな方法で生み出すことができますが、ヒコーキは今のところ油を燃やす方法に頼らざるを得ません。

世界的な原油需要の高まりで枯渇年数が繰り上がり、二酸化炭素削減にあちこちが熱心に取り組んでいる最中、

787,380といった油をたくさん使って速く飛ぶヒコーキが今後続々と生産され、少なくとも今後数十年間、世界中を飛び回るのです。

嗚呼。 。。。



ジャンボ(747-400)で1人当たりの燃料消費量を計算してみました。

成田-ニューヨーク間で、燃料160t,貨物50t,乗客300人(乗員乗客合わせて25t)として計算すると

実際に消費する燃料を130t
そのうち乗客を運ぶために使用する燃料の割合を33%とした場合、

1人当たりの消費燃料は、130kg となります。

もしも3割燃費が良いヒコーキならば、これが91kg となります。

 

追記:
実はこの成田-ニューヨークネタ、catenamsさんから頂きました。

オイラはここまでしか出せなかったのですが、130kgの燃料がどれだけの二酸化炭素になるか、catenamsさんが計算した記事を書いています。

本物の科学者が料理した二酸化炭素排出量に関する記事、興味のある方は是非見てみては如何でしょう。

移動と二酸化炭素量(電車?飛行機?くるま?)

飛行機が出す二酸化炭素量(NRT→JFKを例に)


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コメント 16

tooshiba

一番乗りです。RSSよりも先に来ましたよ。( ̄ー+ ̄)キラーン

世界二大航空機メーカーが速さと大きさで勝負している間隙を縫って、我らが“日の丸飛行機”が「こんなのはどーですか?エコ(ロジー&ノミー)でロハスな飛行機ですよー」と世界に打って出る。

なんて事態を激しく希望します。

新幹線はこの狭い国土を蹂躙しているだけで、採算が取れているみたいです。それに倣って、“日の丸航空機”だっていざとなったら内需だけで何とか採算が合うように作れないものでしょうか。
by tooshiba (2008-01-19 10:52) 

とり

tooshibaさん
早っ!こういう早さは大歓迎です!^^
>速さと大きさで勝負している間隙を縫って
そうですねー。
足が長くて遅いヒコーキ、原油高騰が続くのであれば需要あると思うんですけど。
日本がその辺の価値観を変える原動力になるヒコーキを開発して、しかもヒットしたら痛快だなぁ。
>内需だけで
新幹線車両と異なり、ヒコーキの場合、航空会社が世界中のメーカーから機体を選べます。
生産数が少なくなれば、その分単価が上がりますが、それでも外国メーカーに負けないくらいのコストのヒコーキが作れればいいですね。
オイラ応援するお!<(`・ω・´)
by とり (2008-01-19 11:28) 

コスト

>>速度を下げると揚力↓、迎え角を増やすと空気の抵抗が↑
 速度を下げたからといって、必ずしも燃費が良くなるわけではありません。

なるほど~、飛行機の場合は単純に速度の上げ下げで燃費効率の調整できないんですね。これは車や鉄道と単純比較はできないですね。マッハ0.85付近はこれは技術進歩がないと変わりそうにないですかね~。

>>油に頼らざる 正月に友達のハイブリッドカーに乗って、その燃費のよさに驚いたんですが、確かに飛行機は油以外の燃料ってまず聞かないですね。でもなかなかこういう話題は一般の新聞やTVでは流れないんで勉強になります☆nice!
by コスト (2008-01-19 11:46) 

OLDMAN

とり様 お元気でなにより。とり様の記事を読んでいますと、若い頃にほんの少し勉強しておけばと、いつも嘆いております・・・私の地元からは、別名ツチノコに787の翼&部品をアメリカ本土に空輸しています。中々このツチノコが撮影できない。
色々別名もありますが??  (本名は、B747LCF)
それから記事とまったく関係ない話ですが、
沖縄に新しい航空会社が設立されましたよ。ヘリの会社ですが、また出かける口実ができました。名前が良いです。南西楽園航空。宮古島、小浜島をメインにして
活動しています。格納庫も完成。私は会社の回し者ではありませんが、お知らせまで。
by OLDMAN (2008-01-19 11:52) 

ロック

5%と言わず、10%分のんびり飛べばもっと燃料の節約になるんでしょうね。個人的には10時間が11時間になってもいいじゃないか、と思います。
by ロック (2008-01-19 16:10) 

catenamas

こんばんは、130kgをもとの発生する二酸化炭素の計算をしてみました。結論から言うと、大体 403kgほど排出します。(大阪行きがだいたい100kgなので、思ったより少ないが、この結果をみると離着率が如何に燃料喰ってるかがわかりますね。)色んな仮定が入っていますが、かなり多いですね。浴槽に直すと、1026杯分です。詳しくは僕のエントリを参照して下さいね。

やはり飛行機を動かすのには液体化石燃料に頼らざる得ませんね。燃費改善だけでは限界があるので、やはりその燃料を何から作るかが今後重要になって行くのでしょうね。バイオマスエネルギーの活用や燃料電池が重要なキーワードかもしれません。
by catenamas (2008-01-19 19:09) 

masa

燃費を悪くしてでも時間を求めてしまう
我々にも責任があるんですね。
環境問題を考えるとちょっと複雑な気持ちです・・・
by masa (2008-01-19 19:29) 

おろ・おろし

787の開発スケジュールがまた遅れ、
新年早々ですが、
来年にずれ込むとのニュースがありましたね。

380も同じヤキモキさせましたが、同じことですね。

ANAもどういう路線から就航させるんでしょうかね?
by おろ・おろし (2008-01-19 20:02) 

とり

■xml_xslさん
nice! ありがとうございます。

■コストさん
ヒコーキの場合、速度を下げても単純に燃費が良くならないというのがややこしいですよね。
>ハイブリッドカー
原付スクターターと燃費変わらないんですよね。ビックリです。
カブにはかないませんが。

■OLDMAN様
どうもご心配おかけしましたm(_ _)m
オイラも、もっと勉強しておけばよかったと後悔しているクチですから・・・^^;
>B747LCF
アハハ、ツチノコという別名がついたんですか~。
生産が非常に滞っておりますが、空輸は現在も続いているのでしょうか?
>南西楽園航空
初耳です。早速サイトチェックしてきました。
見に行きましたら、様子など教えてくださいね^^)/

■こけもも:さん
こけもも:さんのような価値観をたくさんの利用者が持てるかどうかがカギですね。
ちなみにオイラは、値段はエコノミーのままで、ファーストクラスのサービスならば、時間は培でもいいです。というか培にしてください。d( ̄∇ ̄*)☆\(--

■catenamasさん
早速拝見しました。いや~。今回は本当にありがとうございました。おかげで勉強になりました。
大阪行きがだいたい100kgなのと比較すると、たったの4倍なんですね。計算を間違えたかと思いましたが、やっぱり合ってました。catenamasさん仰るとおり、如何に離着陸に燃料を消費するか、ということなんでしょうね。
>バイオマス
そのうち、「サトウキビで飛ぶ飛行機」なんて現れたりして・・・。

■hiro78さん
nice! ありがとうございます。

■masaさん
>我々にも責任
他でも書きましたが、無駄な移動時間をできるだけ切り詰めたいというのはほとんどの人にとって偽らざる気持ちですよね。
あとはエコのことを考えて、どれだけ理性を働かせるか、ということになると思うのですが・・・。

■おろ・おろしさん
こんな記事を書きつつも、やっぱり順調に開発が進んで欲しいなどと考えてしまうボーイング派のオイラ・・・^^;
ANAは量産初号機を受領したならば、オリンピックに合わせて北京路線就航を目論んでいたようですがスケジュールの遅れで水泡に帰しましたね。
それでもやっぱり中国路線から投入するのでしょうか??

■letterwritingdayさん
nice! ありがとうございます。

■miffyさん
nice! ありがとうございます。
by とり (2008-01-19 22:30) 

ひろ茶

一度巡航速度を上げたら下げるわけには…ということでしょうね。
一度生活のレベルを上げると下げることがなかなか出来ない、
そんな富裕層や、進化を続ける文明社会に生きる人の
ひとつの象徴なのでしょうか?(笑
by ひろ茶 (2008-01-19 23:28) 

須川橋

こいつはすごい記事です。
ヒコーキの基本から、エネルギー問題まで。
これが世界の現実のひとつなんですね。
とても考えさせられます・・・。
by 須川橋 (2008-01-20 00:01) 

OILMAN

こんにちは。
飛行機のおかげで国内旅行よりも短時間で海外旅行に行けることにありがたみを感じつつ、このお話を読ませて頂きました。
いつも燃料屋としてエコについて気にはなりつつも、飛行機に乗ると単純に楽しんでいる自分がおります・・・
by OILMAN (2008-01-20 17:03) 

飛行機ほど複雑ではありませんが、車やバイクもスピードを落としたからといって燃費が良くなる訳ではありません。
エンジンの設計やギヤ比等で、効率の良いスピードはおのずと決まってしまいます。
ちなみに、オイラのNinjaでは、80km/h以上で走らないと良い燃費は望めません。
一般道を法定速度で走行しようとすると、エンジン回転的に6速に入れられないのです。
往復約20kmの通勤に使用した場合の燃費は約11km/l。
ハイオク指定だし、今のご時世出動の機会がめっきり減りました (T_T)
通勤専用ポンコツ君(H4年式 today)は、ロングドライブでは24km/l以上をマークするエコ優等生です (^^)b
by (2008-01-20 19:32) 

とり

■ccqさん
nice! ありがとうございます。

■ひろ茶さん
>レベルを上げると
この問題はそこに尽きると思います。
利用者も。企業も。

■野原橋さん
ありがとうございます。
ヒコーキマ○アの間では基本的なことを書いてるだけですから~^^;

■ハイマンさん
nice! ありがとうございます。

■kenjiiさん
nice! ありがとうございます。

■カンクリさん
nice! ありがとうございます。

■Krauseさん
nice! ありがとうございます。

■OILMANさん
>単純に楽しんでいる
オイラもそうです。(o ̄∇ ̄o)ハハハ

■くずさん
todayって、そんなに燃費いいんでしたっけ・・・。
オイラも数年乗ってて思い深い車です。
なんにも付いてなくて、軽いんですよね。
かわいがってあげてくださいね(*´∀`*)
by とり (2008-01-20 21:01) 

とり

■sakさん
nice! ありがとうございます。
by とり (2008-01-27 20:23) 

とり

アスランマリオさん
nice! ありがとうございます。
by とり (2008-02-02 17:03) 

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