So-net無料ブログ作成

交通機関とエコ その3 [├雑談]

列車の話

前記事(その2)に少しだけ書いた「地面効果」のことですが。

長々と説明するとボロが出るので控えますが、着陸寸前のヒコーキをイメージしてみてください。

翼が地面スレスレになると、ヒコーキはまるでエアクッションに乗ったかのようになり、接地しにくくなる現象のことをいいます。

この効果を利用すると、少しのエネルギーで浮き上がることが可能です。

人力飛行機、鳥人間コンテストでは必ず出て来る言葉です。

 

実は某大学の研究室で、この地面効果を利用した列車の研究・開発を行っています(特に名前は伏せます)。

この列車、325人を乗せて時速500キロで走行するとしています。

特筆すべきは、自然エネルギーのみでの走行を謳っている点です。

地面効果の利用により徹底的に効率を高めたため、ゼロエミッションが可能なのだそうです。

具体的には、太陽光、風力などの自然エネルギーによる発電を行うのですが、 

十分発電できる時に水の電気分解で発生する水素をタンクに貯めておき、必要な時に燃料電池で発電し、夜、雨天時の定時性も確保できるとしています。

この方法で、日本の気象条件、半分がトンネルでも、500キロ区間を時速500キロ、325人を乗せて、12分間隔での運行が可能なのだそうです。

走行するためには、凹型のガイドウェイを設けるだけでよく、線路、(リニアモーターカーのように)コイルを敷設する必要がないので、建設費も安く済みます。

 

-リニア並みの高速、ゼロエミッション、安い建設費-

まるで夢のような次世代の交通機関だということで、あちこちから注目を集め、国からもお金をもらい、2020年に上記の性能を有する機体の完成を目指し、研究・開発を続けています。

 

本当にこんな素晴らしい乗り物なら、オイラも是非実現して欲しいのですが・・・。

前記事(その2)に目を通していただいた方でしたら、流れでピンときたかもしれませんが、

この列車、発想はホバークラフト、TSL、カスピ海の怪物と同じです。

ホバークラフト等が水の抵抗を無くする(減少する)ことができるのと同様に、

この列車もわずかに浮き上がって「ころがり抵抗」をゼロにすることはできるのですが、

速度を上げれば上げるほど空気抵抗が増えていくという問題点は同じです。

 

大部分を占める空気抵抗を何とかできるならともかく、ごく一部に過ぎないころがり抵抗を無くすために列車を浮上させるわけなのですが、

それに見合うだけの効果があるのかどうか、オイラは正直疑問です。

オイラが思いつく疑問点を挙げてみます。

 

・コスト

たとえ速度を上げるために大きなエネルギーが必要だとしても、風車、太陽電池を鬼のように設置すれば、エネルギーの自給自足は可能でしょう。

当研究室のHPには、この列車の完成予想図が載っています。

ガイドウェイに沿ってびっしりと風車が並んでいますが、確かにそうなると思います。

しかし、発電、蓄電設備に一体どれほどのコストがかかるのでしょう?

1kwあたりの発電コストの一例→ なのですが、LNG火力:6.4円、原子力:5.9円、風力:10~24円

というデータがあります。風力、太陽光発電は一昔に比べれば大分安くなりましたが、

それでもまだまだ高いです。

 

また、この列車は地面効果で浮上するため、小さいとはいえ翼をつけなければなりません。

当然ガイドウェイは一般の線路と比較してかなり幅広になります。

膨大な発電/蓄電装置と幅広のガイドウェイ-

「線路、コイルを敷設する必要がないので、建設費も安く済む」としていますが、どうでしょう?

 

・ころがり抵抗をゼロにする代わりに・・・

ちょっと話がそれますが、鉄道の長所といえば、鉄のレールと鉄のワッカの組み合わせがもたらすエネルギー効率の良さと大量輸送です。

鉄と鉄の組み合わせによるころがり抵抗の低減効果は絶大で、

例えば新幹線の場合、高速域では走行抵抗の大半を空気抵抗が占めます。

(実は、新幹線全体に発生する各抵抗(空気抵抗、内部摩擦抵抗、ころがり抵抗)の割合が知りたくて、あちこち探したのですが結局見つかりませんでした。見つかるのは、上記の「高速域では走行抵抗の大半を~」という表現ばかりでした。)

元々鉄道のころがり抵抗は他の乗り物と比較して非常に優秀なわけですが、

それをゼロにするのと引き換えに、この列車は翼とプロペラをいくつもつけなければなりません。

列車の空気抵抗を減らすためには、先頭車両を流線型にするとともに、断面積をできるだけ小さくし、表面を滑らかにして余計な出っ張りを無くすのがセオリーです。

この列車の場合、地面効果を利用するために空気抵抗軽減のセオリーを無視する結果となり、

”つるっ”とした外見の新幹線やリニアモーターカーと比べ、空気抵抗が増す形になってしまいます。

 

更にこの列車、浮かぶためにはそこそこの速度に達することが必要なのですが、それまでは鉄道と同じように、車輪で走行する必要があります。

エネルギー効率を高めるためには、機体を軽くするのが非常に重要なわけですが、浮かんでいる間、車輪は完全にお荷物状態になってしまいます。

当然空気抵抗にも悪影響ですし、格納式にすれば更に重量がかさみます。 

高速になるほど割合の減ってゆくころがり抵抗がゼロになる代わりに翼をつけ、プロペラをつけ、車輪をつけて・・・ 

果たしてどれほどのメリットがあるのでしょう?

 

・騒音

300キロで走行する新幹線ですら、パンタグラフが発生する騒音、トンネルに入る時の気圧の問題があるわけですが、この列車の場合、更に速度が上がった上にプロペラの騒音が加わります。

現在国内でもよく見るようになったQ400というプロペラ機がありますが、このヒコーキの巡航速度は667km/hです。

この列車は500km/h出すとしていますから、ほとんど高速プロペラ機に迫る勢いです。

この列車の座席数は325。これは中型旅客機に相当します。

こんなものが地上を走るのですから、 相当ヤカマシイはずです。

 

・プロペラ推進によるエネルギーのロス

電車がモーターで直接車輪を回して進むのに対し、

この列車はモーターでまずプロペラを回し、プロペラで発生させた風で進みます。

電車と比較すると「プロペラで風をおこす」という余分な変換が入っています。

プロペラの変換効率は75~80%程度なので、

これでエネルギーの20~25%をロスしてしまいます。

”地面効果を利用してエネルギー効率を高める”がウリのはずなのに、

非常に高効率な鉄輪のころがり抵抗を無くす代わりに

プロペラ推進でエネルギーの20~25%をロス・・・。

これ、本末転倒じゃないでしょうか?

このプロジェクトにはその道の専門の優秀な頭脳がたくさんかかわっておられるはずで、

こんな根本的なことを見逃すとは到底考えられません。

素人のオイラが何か大きな勘違い、見落としをしているのでしょうか??

というか、オイラの勘違いであって欲しい位なのですが・・・^^;

 


素人のオイラがちょっと考えただけでも、地面効果を利用した列車にはこれだけ疑問点が出てくるのですが、そこまでして地表で浮かぶ効果って、果たしてあるのでしょうか?

必要なエネルギーをすべて自然エネルギーでまかない、時速500キロで浮上走行-技術的には可能だと思いますが、チケット代がものすごいことになると思うのですが、どうでしょう?


コメント(22)  トラックバック(0) 
共通テーマ:日記・雑感

コメント 22

masa

さすがはとりさん、今回のお話も専門的ですね。
私は良く理解できませんでしたが・・・
by masa (2008-01-14 19:24) 

チャッピィー

こんばんは。
ブログにご訪問頂き有り難う御座いました。
専門的で良く解りませんが・・実現すると良いですね。
by チャッピィー (2008-01-14 19:58) 

またまた私の苦手な物理ですね
でもこれを読んでいると
物理にも夢がありますね!
高校の頃に気がついていたら
もっと頑張って勉強したかも(>_<)ゞ
by (2008-01-14 21:48) 

ハイマン

今年から電車orチャリ通勤にまたまた変更しました!
by ハイマン (2008-01-14 21:48) 

tooshiba

ころがり抵抗がゼロだと、車輪が空転してしまって進みません。

でも、色々研究すればそれだけ「同じ速度でエネルギーを減らして移動できる」可能性がありますから、無駄ではありません。
答えは「そんなの実用化できるわけないじゃーん!」だとしても。

案外、「儲けよう」とか何かしらの魂胆を持たずに研究したことから、技術的なブレークスルーは生まれるかもしれませんので。

で、前にコメントしましたが、ほかの乗り物。
例えば通勤電車とかミニバンとか。
今は「空気力学なんて、何にも考えていませーん」みたいなデザインのものですら、変わってくるかもしれませんね。というか、変わっていって欲しいなあー。
by tooshiba (2008-01-14 22:09) 

qin

物理は苦手ですが、お話は面白いです。
高校時代にこのブログに出会っていたら物理の点数はもうチョットいい感じだったかしら‥(^-^;;;
by qin (2008-01-14 22:28) 

OILMAN

こんにちは。
様々なアイデアから実用できる技術ができるのでしょうね。
究極のエコが達成できたら日本のエネルギー問題も終止符が打たれるのでしょうけどね。
by OILMAN (2008-01-14 22:46) 

私も物理は苦手ですがお話は、しっかり読ませていただきました☆
by (2008-01-14 22:54) 

ひろ茶

たしかに、はじめのメリットの解説だけ聞くと、
これは完璧に近い乗り物だ!何て思ってしまうわけですが、
忘れがちな空気抵抗を持ってくるだけで、一気に疑問点が出てしまいますね。
自然エネルギーだけで動けるのはいいことですから、
無理に浮上とか高速走行とか考えずに、とりあえず普通の
鉄道車両を作ってみたらどうかな~、なんて思います。
by ひろ茶 (2008-01-15 01:04) 

とり

皆様 コメント、nice! ありがとうございます。

■xml_xslさん
nice! ありがとうございます。

■hiro78さん
nice! ありがとうございます。

■ぴーすけ君さん
nice! ありがとうございます。

■こけもも:さん
nice! ありがとうございます。

■masaさん
マニアックですみません。m(_ _)m
分かりにくいということは、オイラがまだよく理解してないからですね。^^;

■miffyさん
nice! ありがとうございます。

■チャッピィーさん
こんなネタまでお付き合い頂いて・・・。
すみませんね~^^

■まめ助の母さん
あー。オイラも「もっとやっとけば・・・」って後悔してるクチなんですよ><
物理にも確かに夢ありますね。

■ハイマンさん
おー。エコしてますね^^

■tooshibaさん
>魂胆を持たずに研究
それは言えてますね。
>通勤電車
今は完全に効率、利便性優先ですよね。

■letterwritingdayさん
nice! ありがとうございます。

■qinさん
ありがとうございます。
オイラも物理苦手だったんですよ。
今になって苦労してます^^;

■OILMANさん
そうですね。
思わずひざをたたいてしまうような技術が出てきて欲しいです。

■夢空さま
お付き合い頂きまして、ありがとうございます^^

■ひろ茶さん
ひろ茶さんのコメントの中に、オイラがこのシリーズで最終的に言いたいと思っていることが出てます。
by とり (2008-01-15 19:11) 

まさ

こんばんは^^

とりあえず数字だけ。
走行(空気・機械・全部含めての)抵抗・・・
200㎞/hだと0系-≒110kN、700系-≒65kN。
300㎞/hだと0系-≒190kN、700系-≒120kN。

計画粘着(設計時の車輪の摩擦)係数μ=13.6÷(速度+85)。
んでおおよそ100㎞/h≒0.07、270㎞/h≒0.04。
んで粘着係数μは最大粘着力÷上下加重(車体重量?)でも出るみたい。

車輪の滑り率=(車輪の円周速度+進行速度)÷進行速度。
滑り率<1%くらいで最大粘着力を発揮、
300㎞/hだと車輪を≒302㎞/hで回転させると粘着力が最大になる。

手持ちの本だとこの程度ですが・・・
探し出せたらまたの機会でいいですか?^^
by まさ (2008-01-15 20:26) 

ccq

エクラノプランキターっ
by ccq (2008-01-15 21:34) 

んー…
オイラも最初は、ひろ茶さん的な考えを思いついたのですが、現存の鉄道車両が必要とする電力を、この計画の発電設備で賄えるのか? というところが疑問に残ります。
足りないなら、もっと増やせば… となりますが、設備の数を増やすといっても、この小さな島国では限界が低い(設置する土地が無い)ですから現実的とは言えません。
その辺りも考慮に入れた結果が、この列車のカタチになったのではないでしょうか?
まあ、それが500km/hで走行する事を必要条件としての話しであるのなら、オイラは「いらねー」って思いますけど。
この狭い日本では、そんな速度の列車なんか必要ないよ。
大陸横断列車とかに使われるのならいいかもね。
by (2008-01-15 23:52) 

ジョルノ飛曹長

地上で500キロのスピードを出すと、殆ど前が見えなくなるそうで操縦が困難になるそうですね。
電車の場合は人間が操縦する限界を超えてしまうそうで、そうなるとコンピュータ制御になるのかも。
500キロの電車があれば大阪までは1時間ちょい。
これはもう便利以外のなにものでも無いですねー。(^_^)
流通業界に大きな革命を起こしそうですよね。
by ジョルノ飛曹長 (2008-01-16 11:14) 

とり

■まささん
おおお、すんごいですね(@Д@)
ありがとうございます。
早速ころがり抵抗を出そうと思ったのですが、300km/hでの摩擦係数=0.035というところまではなんとかだせたのですが、そこから先いろいろ調べたのですが、わかりません^^;
ヒントくれてもいいですよ?
by とり (2008-01-17 06:36) 

とり

■ccqさん
>エクラノプラン
なんのことかわからなかったのですが、調べました。
そういう名前なんですね。^^

■くずさん
確かに設置できるのか、というのが疑問ですね。コストの問題もありますし。風力発電に恵まれた立地条件のところには集中的に立てて、土地が余っている場所、駅の屋根に太陽パネルを貼って、なにがなんでも自然エネルギーだけで、とかではなく、飽くまでも補助的に利用するのが現実的じゃないかなぁと思うのですが・・・。

■ジョルノ飛曹長殿
>人間が操縦する限界を超えてしまうそう
そうなんですか~。
確かに東京~大阪は大動脈ですから、列車に乗って1時間で着けば、便利でしょうね~。
by とり (2008-01-17 07:17) 

sak

難しいですね(^_^;)
早く移動したい...その気持ちはすごく強いけれど
人間すごく急ぎすぎてる気もします。
複雑ですね。
by sak (2008-01-17 12:35) 

とり

sakさん
すみません、レスが遅れましたm(_ _)m
仰るとおり、移動時間はほとんどの人にとって無駄な時間ですから、短いにこしたことはないと思います。
>急ぎすぎてる気も
日々移動しているsakさんが言うと重みがありますね。
by とり (2008-01-19 11:06) 

cazcater

良く理解できました。
磁気浮上で無理にエネルギーを使わずに、
高速時には、地面効果も採用するのも有りかと思うのですが。
勿論、現在のフランジだけでは無理がありますので側壁のガイド
の併用あるいはレール断面の側面せり上げ方式とかを検討する
必要がありますが…。
by cazcater (2008-01-28 15:18) 

とり

cazcaterさん いらっしゃいませ~ヽ(*´ヮ`)ノ
コメントいただき、ありがとうございます。
仰るように、一つの方式に拘らずに最適な組み合わせをいろいろ模索していくのが大事だと思います。
by とり (2008-01-30 19:15) 

マリオ・デ・ニ−ロ

鳥人間コンテストではよく、地面効果を使った飛行をしていますね、
我々のチ-ムはそれ以前の問題でした(泣)
by マリオ・デ・ニ−ロ (2008-02-02 00:43) 

とり

アスランマリオさん
再挑戦の計画はありますでしょうか?
by とり (2008-02-02 17:04) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0